焦げたソースの香。
屋台電球の光。
子供の笑い声。
もう何年振りだろうか。
地元のお祭りに顔を出した。
毎年1回神社で行われる
地元の小さなお祭り。
各地域から神輿が集まり、
たくさんの人で賑わっている。
金魚すくいをする女の子。
お面をねだる男の子。
入れ放題のポテトをギリギリまで
入れようとするおじさん。
3人でお目当ての的を狙われ、
怒っている射的屋のおやじ。
太鼓や笛の音を交えて
たくさんの笑い声が響く。
今も昔も変わらない、
懐かしい地元の祭り。
とはいってもそんなに
派手なお祭りではない。
夜は神社の中から子供の
遊び場まで出店が並ぶ。
この不況が影響しているのか。
私が小さい頃には神社内に
肩を寄せ合って並んでいた
出店の数もパラパラ。
ちょっと淋しさを感じながらも、
変わらない地元のお祭りが
妙に嬉しさを感じている。
このお祭りは思い出の宝庫だ。
私がまだ小学生だった頃。
早朝6時に目覚しをセットし、
朝ごはんも食べずに神社へ行く。
静まり返った神社の中で一人行う
「とある作業」があった。
それは、
風船釣りの屋台で使用されていた
金具を拾い集める事。
金具を何に使うのかって?
家に持って帰って綺麗に洗い、
1枚のティッシュを半分に切った
ものをクシュクシュに細く束ねて、
金具を取り付ける。
そして、
水の張った洗面所に昨晩買って
もらった風船を浮かべてると、
なんども風船釣りを遊べるのだ!
しかも何回やってもタダ!!
もう嬉しくて仕方がない。
これには理由がある。
当時小学生だった頃の僕は、
毎月のお小遣いとお祭りの日だけ
軍資金が支給される。
とはいっても、お好み焼き1枚
買えない程度の手持ち金。
何度も何度も神社内をグルグル
巡回してどこに投資しようか
とことん迷う遊びをする。
妄想ですっかり楽しんだ後、
ゲームか食べ物の2択から
どちらかを選んでいよいよ
貴重なお小遣いを使う時がキタ!!
安いリング焼きやタイ焼きは
お釣りが余るから2回戦へ行ける。
しかし、たこ焼きや綿菓子、
サメ釣りや射的なんかに手を
出すと1回戦で力尽きる。
慎重にどの屋台へ貴重な
お小遣いを使うか見定める。
ゲームの中でも安い風船釣りや
輪投げなんかは少ないお小遣い
少年にはヒーロー的な遊び。
欲張りな平野少年は風船釣りと
タイ焼きの両方を楽しみたい!
ワクワクしながら風船釣りをして
運良ければダブル釣りなんかしたい!
でもいつもシングル釣りで終了。
たまにミナクルを起こす子が
隣にいると悔しくてたまらない。
風船ダブル釣りはヒーローになれる、
小さな頃の夢だった気がします。
貴重なお金を使って
楽しんだ風船釣り。
1回じゃ足りない!!
何回も遊びたい!!
そう考えた平野少年は、
朝の金具奪回作戦を思い付き、
親に見つかれないようコソっと
早朝に抜け出して神社に走ったのです。
そんなお金のない時代に
一人遊びで夢中になっていた
少年時代の自分が笑えました。
時が過ぎるのを忘れるくらい、
必死でティッシュを細める作業に
没頭する自分の姿が憎たらしい(笑)
すっかり忘れていた記憶が
一瞬でも戻される感覚。
いつまでたっても少年のままの
心をどこかで持ち続けたいものです。
追伸:
妻にその話をすると、
「随分とネクラだったのね。」
と冷たくかわされました…。
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