私が長年愛用している
深緑色のカバンがある。
確か中学生の時に買ってもらった
ちょっと地味で、小汚いリュック。
約15年ほど愛用しているが、
とても丈夫で壊れない。
すっかりこの憎い深緑に
愛着が沸き今も昔と変わらず
リュックを背負っています。
中学生だった当時。
なぜかリュックブームが
私の世代にあった。
中学指定カバンがあったが、
それに入りきらない教科書や
部活のジャージなどを入れるために
リュックが流行ったのです。
どこからやってきたブームか
全く分かりませんが、
時代が変わり、
なぜかヤンキー君たちも
ボンタンに短ランを脱ぎ捨てて、
カラフルなリュックを背負う。
オンリーワン?の自慢なリュックを
見せ合うことが校内で小さな
流行りとなりました。
いま思えば中学生って
よくわからない反社会性を
持ちたい年頃なんですね(笑)
「僕もリュックが欲しい!」
早速母にお願いをしますが、
あえなく却下。
「そんな流行りのモノを買う
必要がない。」
バッサリ切り捨てられます。
ことあるごとに何度も
おねだりをしてみましたが、
「あなたはすぐ飽きるからダメ。」
…。おっしゃる通り。
学校に行けば友達がオシャレな
リュックを自慢し合っている。
ちょっと前までタバコやバイクの
話ばかりで、「女なんて関係ねぇ!」
みたいなことを言っていたO君も、
高さそうなリュックでクラスの
女の子にモテモテ状態。
「くそ!!リュックがあれば
絶対に女の子にもモテるのに…。」
決意した私は毎月の僅かなおこずかいを
コツコツ貯金していきます。
しかし、時の流れは早いもの。
クラス中がカラフルなリュックが
溢れかえったことが問題となり、
校則が改正。
リュック禁止が発令!!
急に学校中は枯れた花のごとく、
活力を失っていきました。
私は流行が落ち着いたことに
ホッと一息。
けれどもリュックを買えなかった
ことがとても淋しかった。
「あ…僕も欲しかったな、、、。」
数カ月後。
母の買い物へ付き合うために
「松坂屋」へ行きました。
すると母が突然言うんです。
「好きなリュックを探しておいで。」
私ははじめこそ「いらない!」と
拗ねていました。
本当に買ってくれるなんて
信じていなかったからです。
でもカバン売り場に行くと、
抑えていた感情が爆発!!
欲しかったカバンが山のように
展示してあるんです。
広告や雑誌で見た憧れの
カラフルなリュックの数々。
まるで宝石箱を開けた
時のような嬉しさ。
私はその中から憧れだった
リュックを2点選び出して
母にどちらかを選んで貰いました。
一つはカラフルな流行りのリュック。
もう一つは深緑の地味なリュック。
母は迷わず地味な深緑を選び、
私にこう言ったのです。
「あなたがずっと欲しかった気持ちは
お父さんもお母さんも知っているよ。
時期が来たらちゃんと買ってあげる。
よく我慢したわね。」
母は続けます。
「なぜ深緑にしたのかはね、
流行りに流されず、モノを大切に
使い続けて欲しいからよ。」
母は笑顔で私に深緑のリュックを
渡してレジに連れて行ってくれました。
後から知ったのですが、
実はカラフルな流行りのリュックより
2倍以上の値段がしたそうです。
深緑のリュックは「ザ・ノースフェイス」
というブランドのリュック。
当時は自由に使えるお金なんて
そんなになかっただろう。
それでも母がコツコツ私のために
お金を貯めて買ってくれた。
母は、モノの価値・お金の価値。
我慢する大切さを教えてくれたのです。
きっと流行の中でリュックを
手にしていたらここまで大切に
しなかっただろう、深緑のリュック。
母との温かい思い出。
実は、
昨日の11月15日は母の誕生日。
お母さんへ。
いつも本当に、ありがとう。
初めまして、こんばんは。
返信削除かばやし和尚と言います。どうぞよろしくお願いいたします。
お母様、お父様の思いが、とても伝わってきます。大切なリュックの中にはご両親の思いがいつも詰まっているのですね。
これからも大切にしてください。